熱い男たちの、カッコイイ男たちの戦いや友情を描いていくことに腐心しています。きだまさし先生

『クローズ』との出会いはいつ頃ですか?

きだ:そうですね、これまでにも部分的には読んでましたが、『WORST外伝 ドクロ』のお話を頂いた時に、きちんと通して読みました。読み終えてから思ったんですが、なんで今まで読んでなかったんだろうっていうのが正直な感想です。面白くて、素直にハマりました。

それまで先生が描かれていた漫画とは毛色が違うジャンルですね。

きだ:そうなんですよね。最初にお話頂いたときは「自分に描けるだろうか」って疑問の方が強かったんです。そこできちんと通して読んでみたら、無骨な男たちが題材になっているものの、内容は「王道の少年漫画だ」ということがわかりまして。ライバルとしのぎを削ったり、そのライバルが仲間になったり。それが分かった時に、自分でも描けるかも知れないって感触を得ることができました。あと毛色が違うだけに、新しいモノに「挑戦してみたい」って気持ちもあったんです。それで最終的には「自分にやらせてください」ってことになりました。

作品を読んでいると、しっかりと『クローズ』『WORST』の世界観をなぞらえながら、見たことのない鉄生のストーリーが面白く描かれているなと思います。

きだ:ありがとうございます。担当さんとは、熱い男たちの、カッコイイ男たちの戦いや友情を描いていくことに腐心しよう、と話をしてます。

先生自身は、昔ヤンチャだったとかってことはありますか?

きだ:いや、自分自身は全く無いです(笑)。ただヤンキー漫画はそれなりに読んでいました。でもなぜか『クローズ』にはあまり触れなかったんですよね。考えてみれば、自分はあまりスカーフェイスが好きではないんです。でも今まさに自分が、そのスカーフェイスの男を描いていると思うと、ちょっと感慨深いですね。

特に武装戦線は傷だらけの男たちばかりですもんね(笑)。

きだ:スカーフェイスってなると、ちょっと自分にとってはハードルが高くなるというか、ヤンキー漫画ってよりもヤクザ漫画のように見えてしまってたんです。ちょっとエグそうな漫画かなって、勝手に想像したんだと思います。でも読んでみたら全然違って。

確かに、登場人物の顔だけ見たら、みんな怖いですもんね。

きだ:そうですね、インパクトありますし、そこが髙橋先生の画力でもあります。そもそもの話をしますと、自分は他の雑誌で漫画を描いていました。秋田書店さんと縁ができたのは、とあるイベントの出張編集部に原稿を持ち込んだところからです。『チャンピオン』というレーベルに対して自分の作品はどうなのかなって思っていたんですけど、そこに触れることで自分に足りない何か得られるかも知れない、っていう挑戦の気持ちも強かったんです。そこでこの作品と出会えたのは、いろんな意味でとても良かったと思ってます。

鉄生の物語を描くにあたって、いろいろ構想は練られたんですか?

きだ:そうですね、連載当時からファンだった人から見れば、自分は新参者みたいなものですけど、通して読んだことでテンションは高くなりました。そして原作を最大にリスペクトしてますので、原作にないことは描かないとか、世界観としてありえないことは描かないとか、そういった点は注意してます。

オリジナルキャラとして「トチロー」が出てきますが、この辺りはいかがですか?

きだ:あくまでも世界観の中でキャラを作っているので、違和感のないようなキャラ作りを心がけています。

作中では図らずも、五代目、六代目、七代目の武装のヘッドを中心に物語が展開していきますが、なかなか凄い顔ぶれですよね。

きだ:一番難しいのは、『WORST』の本編と時代が重なってくる部分ですね、鉄生や将五が作中で大きく成長していくじゃないですか。そことの整合性というか、成長の描き方、終盤に未熟さを残しておかないといけないっていうのが難しいなと思います。できれば『WORST』本編が始まる5分前みたいなところまで行ければなと。『スター・ウォーズ』における『ローグ・ワン』みたいな感じですかね。

鉄生と姫川のエピソードなんかも、ファンとしては読みたいところですね。
きだ:そうですね、まだわかりませんけど、描けるといいなとは思ってます。そこまで描ければ『WORST』本編にそのままつながって、面白く読んでもらえるんじゃなかなと思いますね。
鉄生と言えば、九里虎との絡みも避けては通れない気がしますが。

きだ:そこはどうですかね、本編でもしっかり描かれていますし、今後の流れ次第かと思います。今回掲載していただいた読み切り(月刊少年チャンピオン7月号掲載)にしても、九里虎はとりあえずチラ見せの登場に留めてます。

スピンオフを描くにあたって、絵柄の違いが気になるということはありませんでしたか?

きだ:実際に描いてみたら、髙橋先生と自分の絵柄は、芯の部分でそんなに違わないと感じました。無論、大きく見れば違いますけど、描けそうだという感触はありました。一番違ったのは、やっぱり「目」ですね。ある意味では絵柄の肝ですから、最初はなかなか難しかったですけど、少しずつ慣れてきたかなと最近は感じてます。

特に稲田とか、違和感なく描かれてますよね。

きだ:逆に稲田は独特な分だけ、描きやすいんですよね。やはり難しいのは整ったキャラといいますか……柳とかはやっぱり難しいですね。あと難しいといえば、ライダースの革ジャンを描くのは大変ですね。シワの入れ方とか革の感じをうまく出すにはどうしたらいいかと、いまだに試行錯誤です(笑)。

それを言うと、バイクも大変そうですね(笑)。

きだ:徐々にバイクも多くなると思いますが、物語の中では、まだ鉄生が免許を取ってないので(笑)。

物語について、今後の展開とか意気込みについてお聞かせください。

きだ:そうですね、鉄生については主人公ですが、成長という点ではあまりないかも知れません。その代わり、将五は成長を遂げていくと思います。鉄生に触れ、影響を受けながらどのように変化していくのか……その辺りを描きたいですね。
『WORST』に登場した時点で、将五はかなり硬派な雰囲気を漂わせているので(笑)。当時は15、16歳ですから、少々の背伸びはあったにしても、ああいう雰囲気を出せる男に成長させないといけないなと思ってます。
あんな硬派でありながら、ちょっと前までは野球をやってもいたわけです。鉄生や好誠に影響を受けながら、どんなふうに変わっていくのか、そこをうまく、かっこよく描いていきたいと思ってます。

なるほど、それは描きごたえがありそうですね。

きだ:はい、将五の成長の振り幅というか、それを大きく描くために最初は武装入りを拒む姿を描きました。そこをスタートにすることで、七代目ヘッドまで上り詰める男が、どう武装に惹かれ、成長していくのかを描きたですね。

最後に、『クローズ』30周年についてメッセージをお願いします。

きだ:まずは髙橋先生、おめでとうございます。お会いしたときに、気さくにいろいろアドバイスを頂きまして、感謝しております。見た目のカッコよさと人柄、漫画に対する誠実な姿勢に接して、私も「よし頑張ろう!」とさらに奮起いたしました。
ご期待に添えるようにしっかり描いていきます!また読者のみなさんには、これからもっと激しく熱い物語を描いていきますので、是非楽しんでください!

ありがとうございました。

きだまさし

生年月日:
1980年1月14日
出身地:
愛知県
今まで描いてきた作品タイトル:
『15の夜 REBIRTH・再誕』
『STAR CHILDREN』『夢幻のリユニオン』
クローズ・WORSTで好きなキャラクター:
今となっては断然河内鉄生。
それ以外なら花澤三郎か冨永寅之助